絶対音感は特殊能力か

2015年4月10日
コラム

onpu
絶対音感。あなたはどんなイメージを持ってますか?
テーブルを叩く音、足音、車のエンジン音、全てが音符になって、音名が分かる・・・そんな感じでしょうか?
この「絶対音感」と呼ばれているものは、音楽家になる最低条件のようにもてはやされています。

ドレミファソラシド、この並びかたは全て相対的なもので世界共通の音階。音の高さは振動数で測定することができます。そしてこの基準となるAの振動数は現代でさえ全世界共通ではありません。

例えば標準ピッチAの振動数は1859年のパリ協定では435Hzでした。現在の標準ピッチ440Hzは1955年に国際標準化機構で締結されたものです。
パリ協定の前には合意さえありません。ベルリンで452Hz、ロンドンで453Hz、パリでは449Hzでした。

更に1500年から300年ほどの間、360~510Hzまで三音程度も開きがあったのです。
余談ですが弦楽器も、クレモナ全盛の時代は現在よりかなり弱かったことになります。当時作られた楽器は、現代のピッチに合わせるために補強され魂柱を太くし、作りなおさなければなりませんでした。

さて、絶対音感神話がほんとうだとしたら、これほど地域によって差のあった時代に421Hzの音叉を持ち歩いたモーツアルトは旅先で音程を外してしまいまともな演奏ができなかったことになります。それは考えられません。また、音叉など基準を示す音源が必要ない音楽家も存在しないでしょう。

楽器の演奏に必要な感覚は全て相対的な感覚からくるもので、「絶対」の音感など存在しません。机をコンコンと叩き「これはファです」と言ったら、「A=440Hzの場合ですが・・・」と注釈を付けなければならないのです。大抵の場合は普段その人が使っているピアノの音程に依存するでしょう。

つまり「絶対の」音程とは幅があり、同じ音でも基準ピッチで呼び方が変わります。その人の音程ではなく、まわりの音と自分の音を客観的に聞かなければならないでしょう。

実際のところ、長く楽器を練習していると、ある音を聞いたとき音名が浮かぶことは珍しくありません。まして、それを職業にするほど熟達したら、それほど驚くようなことではないのかもしれません。