左効きの奏者は決して少なくないはずですが、オーケストラを見ていただくとお分かりの通り、ほとんどの弦楽器奏者が右手に弓を、左肩に楽器を構えています。
左利きの奏者があえて利き腕で楽器を、逆の手で弓を使っていると思われます。
私も左利き用の楽器を使っている奏者を見たことがありません。
理由として、左利き用の楽器が少ない、という単純なものが考えられます。
バイオリン属は太い絃のほうへ力木(バスパー)と呼ばれる補強が。細い絃のほうへ魂柱と呼ばれる裏板へ振動を伝える部品があり、幅広い共鳴域を持っています。
ですから、単純に絃を逆さまに貼ってしまうと良い響きを得られません。
そのため、左効きでも最初から右利き用の楽器を使うのかもしれません。
映画「ナヴィの恋」に出演しているバイオリニストは、左手に弓を、右肩に楽器を構えて弾いています。
「左利き用?珍しいな」と見ていたら、どうも、右利き用の楽器をそのまま逆に構えているようでした。
絃も逆に貼っていないため、通常はG線で弓を持つ腕の肘が上がるはずですが、E線で上がっています。
独学で練習したのか習ったのかは分かりませんが、型にはまらない演奏はとても素晴らしかったです。
つい何かに当てはめて考えたり、自分の尺度で物事を単純化してしまいがちですが、音楽、楽器との関わり方にルールはなく、無限大に広がる楽しい世界だと感じされる奏者でした。