肩あての必要性について

肩あての必要性について

2018年8月17日
コラム

慣れない練習生は安定して楽器を持つだけでも難しく、肩あてはとても良い補助具となります。

様々な理由で肩あてを推奨しなかったり、自身が肩あてなしで弾くために生徒に使わせない先生もおられるようですが、それで安心して弾けるなら積極的に使うべきだと思います。

音の変化も究極の話をするなら変わるかもしれませんが、「巧いか、下手か」のレベルに大きな違いはないでしょうし、それなら楽に安定して構えられるほうが良いでしょう。

しかしながら、私のように肩あてが害になっていた場合、話は別です。
出来る限り早い段階で是正しなければ、演奏が楽しくないばかりか上達を妨げ、後の音楽生活に大きな弊害を与えてしまうでしょう。


肩あてで考えられる弊害は

  • 顎と肩だけで楽器を保持しようとして、肩が上がってしまう。
  • 弾いていないときは安定し、弾くと動きだす。
  • 楽器が動かないよう強く顎を引いているため疲れ、長時間弾けない。
  • 常に首、肩に負荷がかかっているため、広範囲で硬直してしまう。
  • 正しいと信じるが故に頑張って練習し、首や肩を痛めてしまう。

これらは「楽器を左手で支えてはいけない」という指導や自身への戒めから来ているように思います。
悲しいことに、真面目な人ほど陥りやすいと言えます。

「左手で支えてはいけないから」、顎と肩だけで支持する→肩にバイオリンの重さが全てかかる&顎にアザができるほど負担がかかる→肩あてで顎あてとの支点間を伸ばし、負担を減らそうとする→肩あてが首から遠く、脚が高くなる→頭だけでなく肩の自由もなくなる。

肩を自由に保つために首に近い位置に肩あてを調整し、力づくで支え続けたら最悪の場合、身体を壊して弾けなくなってしまいます。身体には楽器の重さだけでなく、運弓での右手の重さまで加わるので当然といえばそうです。

楽器を左手で支持してはいけないのか」で書いた通り、楽器は左手でも支持します。
すると肩と頭は楽器の支持から解放され、完全にリラックスした状態で弾くことができます。

楽器と肩との接点は胴のエンドピン寄り、鎖骨です。
肩というより首に近い部分といったほうが正しいかもしれません。

顎あてから顎を浮かし、エッジ部分を首にあてるフォームを基本とします。

このように構えると、肩あては限りなく不要になってきます。使わないのではなく、要らなくなります。

楽器の支点はエンドピン寄りに来るため肩あては高すぎると感じ、外すと身体との滑り止めが欲しくなる程度。

薄い分数バイオリンでも肩あてを使わずに何ら問題なく保持できるはずです。

肩当ての代わりに布を挟んでいる奏者は厚みをつけているのではなく、滑り止め目的が多いのではないでしょうか。

鎖骨へ楽器を預けることができると、左手で意識的に持ち上げる必要もなくなります。このとき顎あてを意識的に引くのではなく、自然に据え置かれている感覚が大切です。

ただし、自転車を走らせずに跨がるだけで選べないように、「弾いているからこそ安定する」ことが前提です。

私が感じている肩あてなしで弾くメリットを以下に記します。

 

  1. 楽器の響きを身体で感じるため、とても気持ち良く練習が楽しい。
  2. 楽器をブリッジで締め付けず、顎と肩で保持しないため胴が解放され、音が明るくなる。
  3. 肩あてが外れたり、ゴムの劣化で裏板を傷つける心配がない。
  4. 肩あての形で楽器の位置が固定されないため、柔軟な身体の動きが許される。肩、首、背中の可動域が増える。
  5. 構えているだけのときより、弾いているときのほうが安定する。(弾けば弾くほど安定する)

これらは全て個人差があり一概には言えませんが、「決して」左手で支えてはいけないと指導され、肩あてと顎あてに頼って弾いていた私には顕著に感じられたメリットです。