「難しい楽器」として名高いバオイリン。興味はあるものの一歩踏み出すにはもう少し情報が欲しい、と考えておられる方は多いようです。
インターネットは本当に便利で、普段なら知り合うはずもない人から意見を聞けたり、手軽に価格を調べたりできます。
しかし人の意見ほど無責任で偏ったものはありません。中には「大人になってからはやっても無駄なので諦めてください」なんてものすごい意見まであるほどです。
もしあなたのお知り合いに音楽、楽器を趣味や生業にされている人がいたら、あなたの気持ちを素晴らしいことだと喜び、応援してくれることでしょう。
誰だって、共通の趣味や趣向を持つ人が増えるのは嬉しいことです。自分の知る素晴らしい世界を共有したいと思うのはとても自然な気持ちです。この世のいかなる富も楽しみも、共有できる誰かが居てこそなのです。
これから始める人へ高度な話題を持ちかける人もいますが、聞く側もまた、難しく考えすぎているかもしれません。
まず、趣味で何かを始めようとしたとき「いくらかかるだろう、どんな練習がいるんだろう、何年でどのくらい上達するんだろうか」と心配になるのは当然です。
しかし例えば「定年後に時間ができたから山登りがしたい」と言ったとき、「危険だから覚悟が無いならやめておけ」や、「装備は100万円くらいが最低ライン」、「標高4,000m以上では・・・」、「垂直氷壁でのスタンスは・・・」なんて話をするでしょうか?
また趣味でサイクリングを楽しみたいと思ったとき、「ちゃんと乗れるだろうか?」や、「競輪学校の人はどんな練習をしてるの?」、「フランスと日本の違いは?」、「トライアスロンで使うチェンジレバーは?」なんて考えるでしょうか。
書道を習いたいと思ったとき、「今更遅いから、やめておけ」なんて言う人がいるでしょうか?
あなたにはあなたの心地良い楽しみかたが必ずあります。ヴァイオリンの世界もそう。あなたが今思っている以上に、とても幅広く柔軟で楽しくやっていける魅力あふれる世界です。
私はいつも、「何からやって良いか分からないなら、できることから始めてください」と言います。
本を買う、楽器を見に行く、レッスンの見学に行く、楽譜を買う、ビデオを見てみる、友人知人にそんな人がいないか聞いてまわる。
何かできるはずです。そうしているうちに、気付いたらかなり進んでいるでしょう。あとは勢いのついた車のようなもの、止めるにもエネルギーが要ります。
発表会の話もあれば、合奏の話も来るでしょう。ひょっとしたら驚くほど早く楽団へ誘われるかもしれません。そのとき恥ずかしければ遠慮して、あなたなりに楽しめば良いのです。そうして手に入れた音楽は生涯の友となり、代えがたい宝物になるでしょう。
あなたがこの素晴らしい楽器をはじめるよう、心から応援いたします。