住宅事情や家族構成、生活パターンによっては音量をおさえて練習したいことがよくあります。
そのため初めからサイレントバイオリンだけを購入し、練習を進めようと考えておられる方は少なくないようです。
最近では、サイレントバイオリンを対象にしたレッスンもあります。
サイレントバイオリンはアコースティックバイオリンに比べて安価で安定した楽器が買えますし、手軽な印象がありますから、気持ちがよく分かります。
もちろん、それはそれで良いことなのですが、もし皆が良く知るバイオリンの音色が好きで、それを目標に練習しようと考えておられるとしたら、考え直していただきたいです。
初歩の練習では、弓の持ち方や正しい音程を覚えたり、楽譜の学習など機械的な学習が多いと思います。この段階では音色や音量より音程を気にするでしょう。
しかしある程度練習を進めていくと、表現、音の質への意識が大きくなってくるはずです。手技の部分は似ているのですが、ここで大きな違いが出てきます。
「サイレント」、つまり「音を出さない」ように購入時から意識して取り組んでいる。
しかしバイオリンはピアニッシモからフォルテシモまでしっかり楽器が鳴らなければ美しい、魅力的な演奏に近付きません。サイレントバイオリンでは、この練習ができないばかりか、意識さえもしない恐れもあるのです。
これは初歩段階の人が考えているより遥かに深刻で、ピアノやギターと違い、音を作らなければならないバイオリンにとって致命的とも言えます。
初歩段階の奏者に多く見られるのは、明らかに音が小さい状態。皆が知るバイオリンらしい音で弾いている人は初歩の奏者が考えるよりかなり強く弓を絃にあてています。
「強く、しかも美しい音色」
「小さく、しかし弱々しくない音色」
こういったことに熟練することが技量の大きな比重を締め、そしてとても時間のかかること。
- 知ることでできること
- 多少練習すればできること
- 習得するのに時間のかかること
これらは明確に分けて考えなければなりません。
調絃している音を聞いただけで奏者の技量がわかる、と感じたことはありませんか?それほど発音は楽曲に大きな影響を与えるのです。
やはり、初歩の段階から「バイオリンは音楽を奏でる楽器」であることを念頭に置き、しっかり発音する練習を積んでいただきたいです。
美しい音が出ると、練習が楽しくて仕方なくなります。相乗効果で、更に高みを目指せることでしょう。
ピアノはもちろん、管楽器や打楽器でさえ夜中でも練習できる専用楽器があり、それらは独立した楽器として新しい表現力も与えてくれました。
エレキギターなど、アコースティックギターには有り得ない表現力で新たな世界を切り開いた楽器もたくさん生まれました。
ジミ・ヘンドリックスのフィードバック奏法、ヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法など、エレキギターなしにあの名演奏は生まれなかったでしょう。
バイオリン属にも電子化の波が来るのは当然のことで、また新しい音楽が産まれる予感がします。
今後は電子バイオリンだけを弾くプロミュージシャンも珍しくなくなることでしょう。楽しみですね。