初めて楽器を買おうと思った時、10万円以下で揃えられたら、と希望される人は多いです。
10万円と言うと、他の楽器では相当な高級品です。バイオリン属は高価になりがちですが、趣味として楽しむには良い楽器が買えるでしょう。
この価格帯で揃えようとした場合、ヤマハ、カール・ヘフナー、鈴木バイオリンなどの量産楽器をお勧めします。
例えば、「ヤマハ、バイオリン作りのこだわり」をご覧ください。⇒こちら
『ストラディバリウスとガルネリ・デル・ジェス。彼らの300年前のメッセージを解析。得られたデータを貴重な指針としながら、三次元CADによりモデリング(設計)。著名なバイオリン製作者の協力を得てヤマハならではの音を追求』
このような研究や製作方法は、大企業ならではのもの。個人の工房で同じことをしたら、相当高額なバイオリンになってしまうでしょう。
カール・ヘフナー社は、1887年、ドイツのシェーンバッハ(現在のチェコのルビー)に、Anton Schallerの弦楽器工房の出身である、カール・ヘフナー(1864 – 1955)によって創設されました。
設立当時はヴァイオリン・ヴィオラ・チェロを製作する弦楽器工房。1919年と1921年に彼の息子ヨゼフとヴァルターの2人が加わり、周辺諸国への輸出が加速。1930年代よりアコースティックギターの製造に進出し、300人を雇用する楽器メーカーに成長しました。
続いて、『鈴木バイオリン「製造について」』
確かな技術と歴史に裏付けられ産み出される製品とコストパフォーマンスは、どれも個人の製作工房が真似できるようなものではありません。いかに完成された製作工程であるか、疑う余地はありません。
手工品がもてはやされますが、我々のようなアマチュア演奏家はじゅうぶん選択肢に入れるべきでしょう。
とはいえ、やはりセットで10万円以下というのはギリギリです。欲を言えば、弓だけでもフェルナンブコ材を使用した3万円程度のものを持ちたいものです。楽器本体は何とかなると思うのですが、弓は作りが単純です。
竿の材料が弱ければどんな名工が作っても良い弓にはなりません。私自身はあまり強く張りませんが、それでも頼りなく感じてしまいます。
この価格帯で大手メーカーの量産楽器の特徴は
- 製造過程が完成されているため、均一な品質が得られている
- 若干重い
などがあげられますが、誤解されるような「全てが機械加工」ではありません。しっかりした調整がなされているため弾きやすく、何ら不自由はありません。
これ以下の、例えばセットで3万円以下というような楽器では、
- ペグなどの部品がプラスチック製
- 調絃が安定しない、狂いやすい
- 指板と絃が離れすぎ、弾きにくい
- 逆に近すぎ、異音がする
- 弓に「ねじれ」など、どう頑張っても使えないものがある
など「バイオリンに似たもの」としか言えない粗悪品も多くあります。
高価な楽器が必ず良いものとは限りませんが、10万円を超えるような楽器はかなり上質なものと思います。
50万円以上もするような楽器を買っても、明確に違いを感じるにはかなりの経験が要るでしょう。
ある程度造りのしっかりした比較的安価な楽器を買い、絃など消耗品をマメに張り替えたりレッスンや楽譜にお金を残したほうが良い状態、音で音楽生活を楽しめるでしょう。
希に「○○万円以下の楽器なんて使い物にならない」なんてことを言う人がいますが、これらの製作社に行って、製造過程を見学し、社員の前で言えるものなら言ってみてもらいたいものです。
情熱と熱意が素晴らしい楽器をあり得ない価格で世に送り出し、音楽、楽器の普及と発展に寄与しました。この素晴らしい功績をどう説明するのでしょう。
確かに、手工品と呼ばれる工房で産み出される「一点もの」は楽器という域を超えた魅力があります。それは生涯の友となり、持ち主だけでなく聞く人も後世にも大切な財産となるでしょう。
だからといって、低価格帯の楽器を斜めから見るようなことをしてはいけないと思います。