バイオリン練習時の音量について

2015年6月13日
悩み相談

souonkei01楽器を始めるとき、心配事のひとつに音量があります。
ご近所に迷惑がかかって、苦情を言われたらどうしよう。それより、家族に嫌がられるんじゃないだろうか。狭い部屋で弾いたら、自分にも相当大きな音が返ってきて疲れてしまうんじゃないだろうか、と。

ヴァイオリン属の音量は大きく、その小さな胴からは想像できないほどです。

重音の練習などを始めたら、尚のことうるさく感じるでしょう。

バイオリンの内部には「魂柱」があり絃の振動は駒の脚から表板へ、表板から魂柱を介して裏板へ伝わります。この効果で楽器全体が響き、大きな音量になります。

「魂柱」とは、書いたまま「魂の柱」。これがずれると、どんな銘器も良い響きになりません。

余談ですが、フランスの映画「シャコンヌ」では冒頭でソリストが工房で修理を依頼しているシーンがあります。

マイスター:「魂柱の位置がずれてる」

ソリスト:「これじゃ弾こうにも弾けない」

マイスター:「酷使するソリストの頭も修理が必要だ」

手際よく絃を外し駒を取り、F字溝から専用のハンマーで魂柱の位置を修正する手つきは鮮やかすぎてヒヤヒヤするほどです。

バイオリンにとって魂柱がいかに大切な部品かが見てとれるシーンです。

楽器の音量は、とても大きな声の人が全力でどなっているくらいの大きさがあります。

とはいえ、弦楽器の音量ですから自宅で弾けないほどではありません。

楽器別の音量を比べると、おおまかに以下のような感じでしょうか。

ドラム等打楽器>吹奏楽器>声楽>弦楽器>ピアノ>ギター>サイレント楽器

バイオリンはチェロなど床に接する楽器と違い、コンクリート造のマンションなら問題なく弾けると思います。

夜は弱音機、消音機などミュートを使用すれば話し声より小さな音になるので、何ら問題なく練習できると思います。

またしても余談ですが、私は職業柄、楽器の練習のための防音対策を相談される機会が多いです。

もちろん音漏れが無いのが最も良いのですが、完全に防ぐには建物の構造から検討しなければならない例も少なくありません。

そこで、最も現実的な対策として「ご近所と仲良くする」を提案させていただきます。

「馬鹿にするな」と思いますか?
人の感覚は非常に鋭く、特に音のエネルギーは意外なほど微細なものです。

例えば「光発電」はあるが「音発電」はありませんね。音はエネルギーに換算すると、極めて微細なのです。

ここから人の張力は非常に敏感なことが分かります。更に、「ウエーバー・フェスナーの法則」、「人の感覚は、大きな刺激には小さく、小さな刺激には大きく働く」があります。

感覚器は爆発音のように大きな刺激で気を失ったりしないよう小さく働き、蚊の鳴くような微細な音には大きく働く。
つまり、どんなに防音対策を施してもホンの微細な音で苦情の元になりうるのです。

そして人が不快に感じるには感情が大きな位置と割合を占めています。

つまり、仲良くするのです。仲の良い人なら、少々楽器の練習していようが気にもなりません。

嫌いな人なら蚊のなくような微細な音でも烈火のように怒るでしょう。

建築の専門家として、最も効果的な防音対策はこれだと確信しています。是非、実践してください。