はじめての先生から「決して」左手で支えてはいけないと習い、長い間そのようにしてきましたが、このように指導をされた人は多いようです。
しかし、現在師事する先生は「それは大嘘で、左手で支えるのが自然」と仰います。
どちらも正しいと思うのですが、私自身は左手で楽器を支えています。
メリットは、
- 顎当てが必要ないほど楽器を軽く支持できる
- ・・・→肩、首が自由になり、とても楽
- ・・・→疲れや痛みが大幅になくなり、良いパフォーマンスを長時間維持できる。
「左手で支えてはいけない」と言われる理由は、左手が自由に使える、ビブラートや位置移動がスムーズになる、といったものではないでしょうか。
ところが、実際のところ左手で支えたほうが肩や首が楽で柔らかく、フィンガリングも自由に、あらゆる演奏がスムーズになります。これはいったいどういうことなのでしょうか?
まず、保持するためにかかる身体への負担を考えてみましょう。
- 左手と肩で支えた場合・・・楽器の半分の重さがそれぞれ下向きにかかる。
- 顎と肩だけで支えた場合・・・楽器の重さ全部が肩へ下向きに。さらに片持ちの楽器が下がろうとする回転力に抵抗するため、顎に上向きの負担がかかる。
顎あてを手前へ引くように支持したほうが軽く感じますが、肩へ下向きに押えようとする力が減るだけで顎にかかる上向きの荷重は減りません。肩あてが近いほど肩は自由になりますが、顎への負担は増します。
楽器の重さは個体差があり、肩当てなどの条件が違うので数値にはできませんが、およそこのようになります。
さらに弓と右腕の重さもかかりますから、左手で支えないと肩と顎への負担は更に増します。
これだけを見ても左手で支えた場合のほうが明らかに身体への負担が少なく支持できることが分かります。しかも顎を使わないため、頭と首が自由になるのです。
肩と顎で支え続けると、頭は固定され広範囲の筋肉が硬直してしまうでしょう。
ビブラート、位置移動、移絃で楽器が動かないよう顎当てで支持しなければならない原因は、恐らく「左手でV字を作りネックを挟んでいる」、または「人差し指の付け根でネックを支えている」が考えられます。
これらは正しい基本姿勢として指導されましたが、このようにすると絃を押える力の他、親指や人差し指の付け根をあてがう力が常にかかります。
すると人差し指の付け根がネックから離れる度に楽器が下がったり前に動こうとするため、グイっと顎当てに力を入れなければなりません。
人差し指の付け根をネックにつけたままビブラートをかけることはできないでしょうし、V字型の掌で挟んだまま位置移動も難しいでしょう。あてがっているのですから当然です。
これを改善するには、親指でネックを下から支え、人差し指の付け根は常に自由な状態を保つことが有効。
こうすると親指には絃を押える指の反力と、楽器の重さの半分だけがかかります。
しかも人差し指付け根に対する横向きの反力が必要ないため、親指も自由になり、楽器を無駄に動かさなくなるため、顎当てさえ必要ないと感じるでしょう。
人差し指の付け根が常に自由なため、ビブラートを繊細にコントロールすることができます。
位置移動も、ネックを挟まないためスムーズにでき、第5位置以上に上がるときだけ軽く顎当てを引くだけで済み、慣れればそれさえ不要です。
いかがでしょうか。
もし顎、首、肩の痛みと疲れをガマンしているなら、一度試してみることをおすすめします。
大丈夫、いつでも簡単に戻せます。