演奏には絶対音感が必要でしょうか?

2015年4月26日
悩み相談

hhfrteバイオリンにはフレットがないため、おさえる場所は演奏者が決めなければなりません。
そのため「絶対音感がないと正しい音程で演奏できないのでは」と心配される人がいます。

結論から言うと、必要ありません。「必要ない」と言うより、既にあなたにも備わっています。理由を説明しましょう。

音楽に興味が無い人でも、演奏がうまいか、下手かは分かります。
「モーツアルトは1/8のずれを聞き分けた」とその能力を讃える記録がありますが、あなたにもバッチリ分かります。我々には既に正しい音程と、そこから外れた音程を聞き分ける能力が備わっています。

「カクテル・パーティー効果」、何種類もの音の中から自分が聞きたい音だけを聞きだす能力も備わっています。
「ウェーバーフェスナーの法則」、大きな刺激には小さく、小さな刺激には敏感に人間の感覚は働き、幅広く、極めて小さな音エネルギーを漏らさず聞き取る能力も備わっています。

これらは全て、楽曲などの中での相対的な感覚です。ブザーのようにある音を鳴らして、「○○Hzだ」と言い当てることができる人はこの世にいません。

バイオリンも同じく、単独なら開放弦、アンサンブルなら加えて他の楽器等との相対的な音程で演奏していきます。

ですから、巷で言われている絶対音感など必要ありません。あなたが今持っている音感でじゅうぶんに演奏ができます。


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練習を進めていくなかで、自分が正しい音程を弾いているのか心配になることがよくあります。これを確かめるには録音して聞くのが一番ですが、チューニングメーターを使うことはとても有効です。

また、部分的に隣の開放絃と聞き比べたり、重音で弾いて確かめることも有効です。
これは何も音感が悪いのではなく、弾くのと聞くのとでは違うだけ。開放絃を含まない旋律を弾いていたら、少しづつズレていき「あれ?」となることは誰でもあります。
繰り返し練習することで、克服できるでしょう。


いつから「絶対音感」などという言葉が産まれたのでしょう。私は建築の専門家ですが、音の要素は「音色、高さ(周波数Hz)、強さ(dBデジベル)」と習いました。

「絶対音感」とはこの3つのうち、「高さ(周波数)」をピアノの鍵盤の並びに当てはめられる、というものだと思っています。
しかし、これには「普段使っているピアノの鍵盤の中で」という条件があります。条件付きの「絶対」なんておかしいですよね。

私でさえ、バイオリンの音域の中ならある程度の音名は分ります。それは特別に訓練したわけではなく、ただ繰返し練習しているから慣れているだけ。
慣れていない楽器の音域になると、おおまかにしか分かりません。「絶対音感」と言われる奏者もピアノの鍵盤の中だけ。

毎日料理していたら味見をするだけで出汁が分かるようになるようなもの。ガッカリさせるようで申し訳ありませんが、たかだかそんなもんです。

もし「絶対の音感」などに頼って演奏しなければならないとしたら、困ったことになります。
過去の長い歴史の中で、年代、地域によっても基準音の高さは違います。現代でもA=442Hzであったり、440Hzであったり。地域によって3音ほどの開きがある時代もありました。そんな中、「絶対音感」を持つ演奏家は地域を越えたら演奏できないなんてことがあったでしょうか。

絶対の音感など、無いと考えたほうが正しいと思います。