一度は不思議に感じることに、「バイオリン」と「ヴァイオリン」表記の違いがあります。
どっちがほんとう?と調べても、なかなか答えが見つかりません。どっちでもええやん、というおおらかな心を持ちたいものですが、そうはいかないのが人の素敵なところ。歴史から振り返り答えを探してみましょう。
私たちの知る「Violin」は英語表記で、故郷のイタリアでは「violino(ビオリーノ)」と名付けられ、そう呼ばれています。
この「○○ーノ」とは、「小さい」とか、英語で言う「ジュニア」を意味しています。
もともとビオラが生まれ、それより少し小さな楽器が作られた経緯から考えると、「小さなビオラ(viola)」という意味の「violino」は自然な呼び方と言えるでしょう。
もちろん現在でも、イタリア語圏では「violino(ビオリーノ)」と呼ばれ、楽譜にもそのように記載されています。
こうして生まれた「violino」は英語圏に渡り、最後のoを抜かして「violin」と読み違えた人がこのように呼び始めます。しかしビオラはやはり「viola」のままでした。英語圏でビオラを「バイオラ」と発音するかどうかは不明です。
そして、バイオリンは「violin」、ビオラは「viola」として日本に入ってきたものと思われます。
前半分が同じ綴り(vio-lin、vio-la)なのに、「バイオ(リン)」、「ビオ(ラ)」と読み方が違うことに疑問を感じないのは日本人特有の柔軟さです。
ですから、「バイオリン」は「ビオリーノ」が語源とすると、綴りがviolinですから「ヴァイオリン」と書くのが正しいかもしれません。
しかしながら、「violino」の勘違いから「violin」が生まれたとしたら、どちらも間違い。
この楽器が生まれた土地では誰も「バイオリン」なんて発音しないのに、なんとも恥ずかしい話題です。
このように、ローマ字読みのイタリア語圏から生まれた言葉が英語圏に入り、発音が違うために不自然なカタカナ語になった言葉は少なくありません。
例えば皇帝を示す「シーザー(Caesar)」の語源はイタリア語圏で「カエサル」と発音しますが、私たち日本人は英語圏の「シーザー」と読みます。
私たちは英語の発音を正しいと思って学習しますが、それはただの「英語訛り」であることも。
このように考えると、言葉や物の名前はどんどん変わっていくのが普通でどれが正しい、と考えると複雑で窮屈な話になります。
「バイオリン」が「ヴァイオリン」と書くなら、「ビオラ」は「ヴィオラ」と合わせると良いんじゃないでしょうか?という程度。
いずれにしても、どう転んでも「ビオリン」、「バイオラ」などと読まないのなら、どっちでも良いのではないでしょうか、というのが私の見解です。
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