バロック音楽の復興とともに、バロック・バイオリン(Baroque violin)という言葉を聞くようになりました。
ビオラ・ダ・ガンバ、チェンバロと共演するためには、バロック・バイオリン、ビオラがふさわしいと言えます。
バロック・バイオリンとは、18世紀半ばまでに造られたバイオリンを言います。ですから、現代では当時の姿のままの楽器は少なく、出回っている楽器はほとんど造り直されています。
これは、演奏の場が「室内楽」らしい狭い空間からコンサートホールなど大きくなり、より大音量が必要になってきたことと無関係ではありません。
当然ながらストラディバリウス、アマティなどの全盛時代に造られた楽器は全てバロック・バイオリンでした。
希に博物館などで当時の姿そのままに展示されていますが、希なケースと言えます。
そして、最近のバロック復興ブームで、これらのコピー品や改造した楽器が出回っています。
バロックバイオリンの特徴は
- ネックとボディのラインが平行(現在はネックと指板、絃が平行)
- ネックが1cmほど短い
- 指板が3cm弱、短い
- 駒が低い
- 駒のカーブが緩い
- 魂柱が細い
- バスパー(力木)が3cm程度短い
- あご当てが無い
- 弓は竿と弦と平行
これらから、音量が現在より小さく、絃も若干弱く張っていたことが分ります。これは、現在の基準音A=442Hzが当時は440Hz以下だったことと関連があります。
弓も、平行なことから現代のように強く弦を張れないと想像できます。時代の音楽、奏法と共に楽器も変化していったことを感じられます。
ネックを長くしたり、絃を強く貼るために楽器を改造することがどれほど難しいかは説明するまでもありません。作りなおしてでも弾き継がれる楽器がいかに卓越した技術で造られ、飛び抜けて優れたものであるかが想像できます。
現在のバロック復興ブームはとても魅力的なことですが、メインの楽器とは別に一挺、一揃え持つことはなかなか勇気のいることです。まして、バロックバイオリン一本だけでずっと音楽を楽しみのは、(もちろんそれは素晴らしいことですが)合奏などを考えると演奏の場を減らしてしまうように思います。
見た目はあまり変わらないので、私達サラリーマンが楽しむにはやはり、通常のバイオリンのほうが良いように思います。